話題の国を紐解く
いま、世界的にサウジアラビアのニュースが盛り上がっていますね。。
サウジアラビアは読者の方にはあまり馴染みのない国かもしれませんが、アラブ諸国ではエジプトと並ぶ大国です。日本ともかなり密接なつながりがあるので、もう少し注目度が高くなってほしいと思っていたところでした。
実はこのサウジアラビア、旅行という観点に立つと、日本人にとって最も入国が困難な国のひとつとされていて、私も実際に入国にかなり苦労してきたという過去を持っています。アラビア半島の国をコンプリートする最大のハードルとして立ちふさがっていました。
これだけハードルの高かったサウジアラビア入国ですが、私は2017年、ついに商用ビザでのサウジアラビア観光を実現し、長年の悲願を叶えることができました・・・!
数少ないサウジアラビアへの旅行経験者の一人として、この際きちんとこの国の見どころを紹介しておいたほうがいいと思うので、私が独断で選ぶオススメスポットを一挙に紹介しようと思います!
その前に、現状のサウジアラビアの入国制度を紹介したいと思います。私が訪問した2017年当時とは状況が変わっていますので、その点を触れておく必要があると思うので。。。
ビザ制度の緩和が進む
2019年1月現在、サウジアラビア政府は、自国のスポーツ協会「Sharek(شارك)」が協力するイベントのチケットを入手した方に対する電子ビザの発給を開始しています。サウジアラビア政府は、ムハンマド皇太子の主導のもと、国家改造プロジェクト「Vision 2030」の一環として観光産業の活性化を目指しているのです。
※2019年1月現在、2018年12月13~15日のフォーミュラE(会場:ディルイーヤ)、2019年1月16日のスーペルコッパ・イタリアーナ(会場:ジェッダ)のチケットを購入した方を対象とする電子ビザの発給を確認しています。
この新しいビザ制度にはSharek International Event Visa(SIEV)という長ったらしい名前が付けられていますが、このビザさえあればサウジアラビア国内での自由旅行が可能なことを考えると、事実的に観光ビザのようなものと言えるでしょう。
サウジアラビアのSharekビザ(SIEV)概要
滞在日数:30日間
申請費用:640サウジ・リヤル(20,000円弱)
取得方法:Sharekホームページから。
無料イベントの申し込みではSharekビザの取得はできません。
※現在、サウジアラビア政府はSharekのイベント参加者以外に対しても電子ビザを解禁する動きを見せています。
このような時代の流れですので、サウジアラビア政府の観光セクターにお勤めの方々の価値観に合ったものかは不明ではありますが、日本からのサウジアラビア訪問者の端くれとして、ぜひ旅の参考にしていただけるとありがたいです。
1. 砂漠の造形美
日本の多くの方がイメージする砂漠は、鳥取砂丘と同じように、細かい砂でできた砂丘が一面に広がる光景だと思います。これは、砂漠のなかでも砂砂漠(すなさばく)と呼ばれるもので、サウジアラビアの東部に広がるルブアルハリ砂漠がその代表的なものとなっています。
しかし、サウジアラビアにおいて、砂漠の魅力は、そのような砂砂漠に留まりません。サウジアラビアの砂漠の魅力は、砂砂漠にあるのではなく、長い年月をかけて自然が生み出したその造形美にあります。
首都リヤドから車を走らせること約100km、そこに、「世界の淵(ふち)」(حافة العالم)と呼ばれる崖があります。ただの崖っぷちではありません。世界の崖っぷちです。。笑
ここに行けば、どのような崖っぷちな状況になってもきっと大丈夫。そう思わせてくれる、そんな場所です。
2. 砂漠の巨大クレーター
サウジアラビア西部の砂漠地帯に突如として現れるワーバ・クレーター(فوهة الوعبة)は、世界屈指の規模を誇る火山クレーターです。
クレーターの幅は約2kmと非常に大きく、まさに圧巻。。
降水が少なく、風化が起こりにくいアラビア半島ではありますが、このようなクレーターがみられる場所は他に探してもまずありません。サウジアラビアでしか見られない風景のひとつといえるでしょう。
以前、火山クレーターか溶岩クレーターかで論争があったそうですが、周辺には溶岩でできた地形が広がっているほか、クレーター周辺に地球外の天体の痕跡が見当たらないことから、今では火山クレーターということで話がまとまっているようです。
3. 古代アラビアの首都
アル=ファーウ(قرية الفاو)は、アラブ人遊牧民の王国「キンダ王国」の最初の首都として繁栄した都市遺跡です。キンダ王国は、アラビア半島の交易ルートの安定を求めたアラビア南部の「ヒムヤル王国」の庇護を受け、中央アラビアのアラブ人部族を統合して建国されました。
この王国は、529年ごろ、メソポタミアのアラブ人王朝「ラフム朝」の攻撃で滅亡してしまいましたが、ムハンマドがアラビア半島にイスラーム共同体を築き上げる前の時代にアラビア半島の遊牧民が団結して王国を築き上げていたという点で非常に評価されるものです。
イスラーム以前のサウジアラビア中部の代表的な遺跡として、ぜひ訪問地リストに加えていただければと思います!
4. 新バビロニア最後の王が滞在
サウジアラビア北部の都市遺跡タイマーは、古代メソポタミアの王朝「新バビロニア」の最後の王であるナボニドゥスが約10年にわたり過ごした地として知られています。
そんなタイマーの町の西方にはナボニドゥスの時代の遺構「アル=ハムラ宮殿」がありますが、こちらは残念ながら非公開。他方、町の中心部にはナボニドゥスが築いた井戸「ビイル・ハッダージ」(بئر هداج)は一般に公開されていて必見です。
ビイル・ハッダージは、ナボニドゥスがこの地を去ったあともこの地のアラブ人部族に利用され続けました。そもそも、タイマーはナボニドゥスが来る以前からアラブ人部族の都市として機能してきた町です。旧約聖書のイザヤ書には、アラブ人が住む地域のひとつとして「テマの地」という文字が出てきます。
5. クルアーンに登場する墓石群
バックパッカーにおなじみ、「中東の3P」(※パルミラ、ペトラ、ペルセポリスの総称)のひとつ「ペトラ遺跡」と並び評される遺跡、マダイン・サーレハ。
アラブ人の一部族に端を発する交易の民ナバテア人の遺跡としては、首都ペトラに次ぐ二番目の規模となっており、また、最大規模の墓石群でもあります。
そんなマダイン・サーレハは、クルアーンでは「アル=ヒジュル」との地名で登場し、この地にいた「サムード人」という人々がアッラーに背いたため呪われたとの記述があります。
こうして呪われた地といういわくつきの土地となったマダイン・サーレハですが、サウジアラビア初の世界遺産にも登録された場所でもあり、観光客にとっては必見の地でもあります。
サウジアラビア南西部の町アブハーから西に約20kmの場所にある村「リジャール・アルマア」(قرية رجال ألمع)は、サウジアラビアでも最も美しい村として知られています。
この町を特徴づけるのは、なんといってもその独特な建築スタイル。この地域の建築は、天然の石と木、土器を組み合わせて作られます。一見簡易な建築スタイルのように感じられますが、この村の建物の多くはなんと4階建ての高層住宅。その先人の知恵には感嘆せずにはいられません。
建築様式が独特で、かつフォトジェニックな村という点から考えると、この村は、日本で言えば白川郷のような感じの場所。サウジアラビアの秘境村として、ぜひ訪問リストに加えていただければと思います。
2019年1月現在、ユネスコ世界遺産の暫定リストに登録されています。
7. 天空の城塞都市
サウジアラビア南西部にある村、ディー・アイン(قرية ذي عين)は、白い岩肌が特徴的な岩山の上に築かれた伝統的な村です。
この村は約400年の歴史を持っていますが、サウジアラビア建国後の急速な近代化に伴い、全村民がこの村を離れたため、廃村となってしまいました。その結果、かえってサウジアラビア建国以前の山岳部族の伝統的な生活の痕跡として注目を浴びるに至っています。
小規模な村でありながら、村の周囲には防衛のための城壁が築かれ、まさに城塞都市の様相を呈しています。ここディー・アインはサウジアラビアの秘境中の秘境ですが、サウジアラビア政府も観光地としての可能性に注目し、遺跡村として村を整備しているようです。
2019年1月現在、ユネスコ世界遺産の暫定リストに登録されています。
8. サウド王家誕生の地
首都リヤドの西方に位置するオアシス都市ディルイーヤは、サウード家が初めての王国を築いた場所として知られています。
この辺は私の関心分野なので詳しく書くときりがないのですが・・・(笑)、簡単に言えば、サウジアラビアの礎がこの地で築かれたというその一点でみても非常に歴史的に重要な場所なんです。
サウード家がオスマン帝国からメッカを奪い取ったことでその報復に遭い、ディルイーヤは徹底的な破壊を受けましたが、かえって近代化を免れたことで、アラビア半島の伝統的な建築を残す貴重な歴史的遺産として2014年に世界文化遺産に登録されることになりました。
こうして世界的にもその価値が認められたわけですが、サウジ政府としても、自国の王家の出身地として大々的に宣伝したいわけで、丁寧な修復工事ののちに一般公開も行っています。
9. 世界一の海でダイブ
サウジアラビア西部は、世界でも最もダイビングが盛んな海のひとつ、紅海に面しています。紅海は周辺に砂漠地帯しかないため、流入河川がないに等しく、世界でも特に透明度の高い海として知られています。
日本には慶良間諸島があるのにわざわざ海外で、、なんて思っていた私でしたが、紅海でイルカとダイビングして以来、紅海の魅力にハマってしまいました。確かに地上は砂漠だらけで殺風景かもしれませんが、その海のなかには一面のサンゴの森が広がっています。
サウジアラビアは、そのお国柄、国内のダイビング人口も少ないため、サウジアラビアの海は他の国と比べると手つかずと言ってもよいレベルで残されています。まさに海のラストフロンティアといったところでしょう。。
10. サウジ人
もう、書きながらずっとこれが言いたくてたまりませんでした。
サウジアラビアでは、旅の先々で素敵な出会いがあります。国自体は伝統的に観光客の受け入れに積極的ではありませんが、実際に街角に出ると、歓迎の声をあちこちで聞くことになるでしょう。
いずれ観光立国になるにつれて観光客慣れしてくることになるのかもしれませんが、現時点では、外国からの観光客と言えばもてなしてくれること間違いなしです。
ここまで9つのオススメスポットを取り上げましたが、正直サウジアラビアの見どころはまだまだ書き足りていないのが実情です。世界遺産の登録案件すらほとんど取り上げられていません。でも、それでもここでサウジ人というトピックを取り上げたのには訳があります。
というのも、実際に旅をしていると、観光資源の有無というよりは、むしろ旅先での出会いのほうが旅の満足度を左右することが多いんです。これは、私が88か国を旅するなかで感じてきたことでもあります。
その意味では、サウジアラビアが外れになる確率は限りなくゼロに近く、実際、サウジアラビアを訪問して嫌な思いをしたという方に未だ会ったことがありません。
もちろん、どこの国にもいい人と悪い人がいます。しかし、イスラーム法が国の隅々にまで浸透したサウジアラビアでは、「旅人を歓待する」というクルアーンの教えを純粋に守る方が多い印象を受けました。
そのため、仮にトラブルに巻き込まれたとしても、周りのサウジ人がきっと助けてくれるはず。観光インフラが整っていない国で旅をするのは大変ですが、イスラームの価値観とその土地固有の文化を尊重する姿勢さえあれば、サウジアラビアを心ゆくまで満喫できるはずです。
いかがでしたか?
少しでもこの記事が参考になれば嬉しいです!
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